借り入れなし、自己資金のみでの開業

若い頃はただお金が欲しく、調理の専門学校を卒業後は給料の良い飲食店を数年毎に渡り歩いていました。
自分のお店を持ちたいなどいう目標がある訳でもなく、その先も一生、雇われ料理人として生きていくのだと思っていました。

そんなある日、一軒のイタリアンレストランに夕食を食べに行きました。
こじんまりとしたお店でしたが、元気一杯の女性のシェフが厨房で腕を振るっていました。

注文していたピザが運ばれてきて、それを口にした瞬間衝撃が走りました。
今まで食べたことがない美味しさ。その秘密は厨房の奥にありました。
炭火が真っ赤に燃える石窯。その前で汗を流す女性オーナー。
心から素敵だと思いました。そして、私もあれくらい楽しく仕事ができればと、この時始めて思ったのです。

それから私は心を入れ替えて働きました。自分の店を持つために。
贅沢など一切せず、できる限り開業資金を貯める為、日夜働き続けました。

そんな甲斐もあり、数年後には小さいながらも自分の店を持つことが叶いました。
借入金は一切なし、自己資金のみで開業という少し無理のある計画ではありましたが、個人事業主としてやるなら十分だと思っていました。
できるだけ初期投資を抑えるために居抜き物件を借りたり、経費を抑えるためにキッチンスタッフは雇わず、軌道に乗るまではオーナーシェフとして一人で料理を担当することにしました。

開店から1年ほどは経営的には苦しかったですが、お客様にも恵まれ、料理人としてはもちろん、経営者としても充実した日々を送っていました。 そして人気の雑誌に掲載されてからは、地元の人気店として週末などは予約が取れない、と噂のイタリアンレストランとなっていました。

突然の事故。その時期だけ乗り切れれば何とかなる

そろそろホールスタッフだけではなく、キッチンスタッフも雇おうと思っていたある日、車を運転中に接触事故を起こしてしまいました。
どちらが悪い訳でもないと判断され、事故は示談となりました。
車は保険に入っていたので修理できましたが、運悪く私は利き手を怪我してしまいました。

もっと早くにキッチンスタッフを雇っていれば良かったのですが、オーナーシェフの私が包丁を握れない以上、店を開けることはできなくなってしまいました。
当然収入はゼロ。
借入金等はありませんでしたが、様々な支払いは待ってくれません。
飲食店向けの保険も加入していましたが、支払い総額が予想以上に高く、本当に困ってしまいました。

怪我は直ぐに治る。今だけ、この時期だけ乗り切れれば、商売を続けることができるのに!

今まで借金をしたことなどありませんでしたが、インターネットで自営業でもお金を貸してくれる会社を見つけました。
まずは事業計画のやり直し。
資金の減りと、これからの売上額予想の変更。
出してみた数字は自分の予想以上に悪かったですが、事故を起こしてしまった自分が悪いのです。

下方修正した売上予想に基づき、借入金を出来るだけ小額にして、月々の返済金を無理のない計画にしました。
再オープン後、数ヶ月はお客様の減少と借金の返済が重なり大変でしたが、1年以内には借入金も返済できました。
無理のない計画を立てたのが良かったのだと思っています。

浪費の為に借金するのは論外ですが、自分の店を守るための借金なら、私はまた同じ状況に置かれたらするでしょう。

自営業は大変だと思われるかも知れませんが、失敗する恐怖よりも、成功する喜びの方がずっと大きいです。

イタリアンレストラン経営 38歳 男性

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